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一旦、国内株価も外貨相場も健全な調整へ~中長期的には、バブルではなく、実態改善を踏まえての株高・円安へ~

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 2/25(火)の米国市場では、株価が大幅に下落(ニューヨークダウ工業株指数は、前日比216.40ドル幅、1.55%下落し、13784.17ドルで引ける)、外為相場も大きく外貨安円高へと振れた(米ドルは91.63円、ユーロは119.77円、豪ドルは94.17円)。
 こうした米株安、円高を受けて、本日(2/26、火)の国内株価も、大きく下落するだろう。しかしそうした調整は、極めて健全なものであると言える。

1.そもそも、昨日(2/25、月)の円安・株高が、持続可能性に乏しかった

 実は、昨日発行の当事務所の無料メールマガジン「凸凹珍道中」第54号(2/25(月)付)では、次のように述べていた。
 「先週の当メールマガジンで、日銀総裁は「酒は飲め飲め、飲むならば~♪」(つまり「黒田節」)ではないか、と書いたところ、ここ数日は問い合わせが多いです。
 日経の観測記事が流れた2/25(月)は円安に振れて、それは黒田さんが財務官時代に円売り介入をしたとか、積極的な緩和論者だからとか、説明されています。しかし、今さら介入というわけではない(そもそも介入をするのは財務省であって、日銀ではない)ですし、為替に対する影響だけ言えば、日銀が外債を買うべきだと主張していた岩田一政さんより黒田さんの方が、円安インパクトは弱いはずです。
 筆者は、副総裁に岩田規久男さんが就く、という点に意外感があったと思いますが、それでも大きく円安に振れるような材料ではありません。円安の動きには違和感があり、よくわかっていない海外投機筋が、岩田規久男さんと岩田一政さんを混同したのではないか、との冗談に真実味を感じるほどです(あくまでも冗談です)。おそらく今後は、円安に振れた分が円高に振り戻り、国内株価も一旦下押しすると見込んでいます。」

 まさに書いた通りの展開に踏み出し始めているわけであるが、メールマガジンで述べたように、昨日の円安とそれを受けた国内株高には、やや「浮かれ過ぎ」の感も強かった。黒田氏ももう一人の副総裁候補である中曽氏も、国際畑の経験が深い。とすれば、国際関係重視の布陣とも言え、G7・G20会合で示された、円安を目的とした手段をとらない、との国際社会の意向に沿うと考えられる(両氏が国際社会を説き伏せ、日本の円安誘導を推し進める、という解説も目にしたが、現実味の薄い極論過ぎる)。
 また、外債購入うんぬんを別にしても、黒田氏も岩田氏も、緩和推進論者ではある。したがって、両氏が就任した直後の金融政策決定会合(4/3~4/4)にでも、追加の緩和策を打ち出すのではないか、との期待が生じた点も、昨日の国内株高・円安といった相場動向の背景となっているだろう。しかし、両氏が緩和論者であるということは、既に日銀が行なっている積極的な緩和策(今年内は既存の緩和策を淡々と消化し、来年は無期限緩和を行なう)を肯定するということであり、さらに一歩も二歩も緩和に踏み出す、という展開までは保証されていないだろう。
 これも2/24(日)付有料メールマガジン「世界経済・市場花だより」第87号で書いたように「日銀に対し、帽子から手品師のように想定外の策を繰り出して、バブルを引き起こしたり超円安にしたりしてほしい、という人は多いのかもしれませんが、帽子からせいぜい鳩は出せても、象は出てこないものです」と言える。

 すなわち、昨日の米国株の急落や、米国市場における大幅な円高が生じなかったとしても、近日中にどこかで、国内株価と外貨相場(対円)の反落は現実化していたと考えるのである。

 ただし、おそらく本日(2/26、火)に生じる株価や外貨相場の調整は、最近の強気相場の健全な調整であり、望ましい息抜きであるとも言える。当メモ「一隅の花」2013-001「足元の相場膠着について~第一幕と第二幕の間の、必要な一休み」(1/21付)では、これまでの安倍効果期待による相場上昇という「第一幕」から、日本の実態経済の改善に沿った「第二幕」へ移行する間の「幕間」が生じつつあるのではないか、と書いたが、これから本格的な幕間に突入した後、中長期的に第二幕の株高・円安に入ると見込めよう。

 そうした第二幕とは、バブルではない。引用が多くて恐縮だが、前掲の有料メールマガジン「世界経済・市場花だより」第87号では、次のようにも書いていた。
 「現在安倍政権が目指している政策の方向性を、虚心坦懐に眺めれば、一部が騒いでいる「アベノミクス」=「お金のバラマキ、公共事業のバラマキによる、さらなる円安志向、全産業・企業の水膨れ、株式市場におけるバブル(つまりどんな銘柄の株価も上がる)」という図式は、虚像に過ぎないことがわかります。虚像を相手に、議論したり、喜んだり悲しんだりしても、仕方がありません。
 実は安倍政権が進めつつある経済政策、真の「アベノミクス」は、バランスが取れたものと考えられますので、時間はかかるかもしれませんが、日本の経済・企業収益は、着実な回復期に入り、株価は着実に上昇する(ただし努力する企業の株価は上がるが、そうでない企業の株価は下がる)と予想します。それはとても健全なことです。バブル幻想は捨て去った方がよいと思います。」
 昨日(2/25、月)の株高の背景には、日米首脳会談で、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加が事実上決定した、という点もあるだろう。しかしTPPも、黙っていても経済的な繁栄をもたらす福音ではない。国際競争の土俵に乗ることで、競争力のある産業・企業が成長することができるという枠組みである。安倍政権は「産業・企業の新陳代謝をうながす」とも明言しており、衰退する産業、消えて行く企業もあるだろう。つまり、競争力のある産業・企業が伸びることで、全体としての日本経済・企業収益が拡大し、それが全般的な株価上昇を引き起こすだろうが、それは全ての株価の底上げは意味しないのである。


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